この度、栄養科学研究所のボインドグルン金花客員研究員が内蒙古科学技術発明賞二等賞を受賞されました。内蒙古科学技術発明賞は、内モンゴル自治区党委員会と人民政府が設立した内モンゴル自治区科学技術賞という総合的な科学技術賞の一つで、2年に一度表彰される賞です※。
金花客員研究員の受賞は、金花客員研究員が長年研究をされている羊尻尾の脂質に関する研究成果に基づく内容に対してでした。金花客員研究員は、羊の尻尾に含まれる脂に対してマイクロ波光制御技術と減圧蒸留による臭みの除去、そしてタイム(thyme)という香りがある植物を用いた物理的な脱臭方法を組み合わせることで、臭みのない高品質な羊尻尾油脂を製造しました。さらに亜麻仁油との調合に酵素法エステル交換技術を用いることで、高品質な羊尻尾油脂を調製するという重要な技術を確立しました。この結果、既存の羊尻尾油脂精製過程で生じる栄養成分の破壊や臭み、また酸化しやすい亜麻仁油による品質の劣化や健康への悪影響といった技術的課題を解決しました。
この油脂にはn-3系のα-リノレン酸が24%、また脂溶性ビタミン類が含有しており、さらに体温(37度)で溶ける性質が安定するといった特性があることが確認されました。さらに動物実験から自発性高血圧ラット(Spontaneously Hypertensive Rat: SHR)の血圧上昇を緩和させ、脂質代謝の改善、そして肝機能とテストステロン分泌を向上させるなど、寿命の延長に寄与することが確認されました。
この技術は経済的、社会的そして生態的な利益に直結するものであり、幅広い応用が可能な技術と考えられます。金花客員研究員は本研究から得られた中核的技術から3件の国家発明特許、7編の学術論文、そして3件の団体基準と多くの成果を残されました。本技術を評価した内モンゴル欣洋瑞知的財産研究所からは、技術成熟度はレベル9、技術創新度は国内外の技術のギャップを埋めたことを意味するレベル4、技術先進度をレベル7であり、国際的に最先端水準に達していたとの評価が得られました。
※内モンゴル自治区科学技術賞には科学技術特別貢献賞、自然科学賞、技術発明賞、科学技術進歩賞、青年科学技術革新賞、国際科学技術協力賞の6つのカテゴリーに分かれており、特賞、一等、二等などに分かれています。2024年度は科学技術進歩賞で特等1件、一等35件、二等79件、自然科学賞一等5件、二等14件、技術発明賞一等6件、二等14件が授与され、青年科学技術革新賞には9名、国際科学技術協力賞には3名が選出されました。

