活動・業績報告

太田敏子客員教授が学会発表を行いました

第62回日本宇宙航空環境医学会大会(開催2016.10.13-15 於愛知医科大学 たちばなホール1号館)において、本学/JAXA共同研究として進んでいるヒト予備試験の実験データの一部を発表しました。

フラクトオリゴ糖摂取による免疫・腸内環境への影響の統合解析

加藤完(1)、太田敏子(2, 3) ((1)理化学研究所・統合生命科学研究センター、(2)宇宙航空研究開発機構、(3)女子栄養大学・栄養科学研究所) (研究協力者:(1)大野博司、(4)服部正平、(5)菊池淳、(3)山田和彦、(3)香川雅春、(4)須田瓦、(3)鈴木小夜.(1)理化学研究所・統合生命科学研究センター、(3)女子栄養大学・栄養科学研究所、(4)早稲田大学・理工学術院、(5)理化学研究所・環境資源科学研究センター)

論文として未公表ですので、全容は公開できないのですが、興味深い結果も出ております。マルチオミックスの統合解析は現在進行中です。この予備試験は、参加していただいた本学のボランティアの方々からの試料が解析されています。皆様のご協力に関係者一同心より感謝申し上げております。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)、理化学研究所らとの共同研究

【背景】 宇宙環境では、ヒトの自然免疫に関与する因子であるNK(ナチュラルキラー)細胞や、免疫グロブリンAの量が減少することが知られています。そのため、宇宙から帰還したばかりの宇宙飛行士は感染症にかかるリスクが高くなると危惧されています。しかし、今日に至るまで宇宙飛行士における免疫系で生じる変動の実態はまだ明確ではなく、またその対策も確立していません。

女子栄養大学および女子栄養大学の附帯施設である栄養科学研究所は、日本における宇宙航空開発の政策を担っている宇宙航空研究開発機構(JAXA)および日本における唯一の自然科学の総合研究所である理化学研究所、そして早稲田大学の研究者と共に、宇宙飛行士および宇宙空間に輸送した飛行マウスから糞便や血液、唾液などの生理学的サンプルを採取し、宇宙環境における腸内細菌叢、代謝産物、免疫系の変動評価と評価に活用できるバイオマーカー候補の同定、そしてプレバイオティクス(お腹の腸内細菌のバランスを整え、健康に良い影響を与える生きた微生物をプロバイオティクスとよび、この微生物の働きを助けるオリゴ糖などの物質をプレバイオティクスといいます)の効能を評価することを目的とした共同研究(2014-2018年度)に参加しています。本研究に参加している本学および、栄養科学研究所の研究者は次の通りです:

1)太田敏子 (栄養科学研究所 客員教授)

2)香川雅春 (栄養科学研究所 副所長・准教授)

3)山田和彦 (女子栄養大学 生化学研究室教授)

また他にも多くの本学研究者が研究協力者として、この共同研究に携わっています。

【研究方法】 宇宙飛行士から採取した糞便や血液・唾液などのサンプルを用いてオーミクス解析という、ゲノムやたんぱく質など生物データの「すべて」を集約・統合して生命現象を俯瞰的に理解する解析を行い、口腔や腸内に存在する細菌種の分布や分泌される代謝産物や免疫因子の網羅的解析、そして飛行マウスのサンプルからは免疫組織の形態学的解析、遺伝子の発現などのヒトのサンプルからだけでは行えない免疫機能の量的・質的変化の網羅的解析を行います。そして最終的に、ヒトとマウスから得られたデータを基に免疫・腸内環境の統合評価を行います(図)。

(図) 研究の全体像

(図をクリックすると大きくなります。)

【本研究の社会的意義】 宇宙飛行士の健康管理に資する免疫評価をおこなう本研究は、特殊環境における腸内免疫研究、そして地上におけるライフサイエンス研究や技術応用分野など幅広く社会に貢献できるものとして期待されています。